「力」は不要!牡蠣の殻剥きは「場所」がすべて。失敗しないコツと道具を徹底解説

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牡蠣が好きだ。

生牡蠣、焼き牡蠣、牡蠣フライ、牡蠣鍋。どれでもいい。しかし家で殻付きを買ってきたとき、多くの人は壁に当たる。殻が開かない。ナイフが滑る。手を切る。格闘すること10分、やっと開けた牡蠣は身がぐちゃぐちゃ。これは努力が足りないのではない。場所が間違っているのだ。

そもそも、牡蠣をこじ開けようとしてはいけない。牡蠣の殻は二枚貝だが、普通の二枚貝と違って貝柱が一本しかない。その一本を切れば、殻はすんなり開く。逆に言えば、貝柱を切らずに力任せにこじ開けようとしても、殻はびくともしないし、無理に開ければ身が崩れる。

牡蠣むきの極意は「力」ではなく「場所」だ。平らな面を上、ふくらんだ面を下にして持つ。蝶番(ちょうつがい)側を手前に。貝柱は牡蠣の中央よりも少し上、右寄りの位置にある。そのあたりを目指してナイフを入れる。

ナイフを上殻に沿わせてすべらせ、貝柱に達したら切る。それだけだ。隙間がなくてナイフが入らないときは、殻の先端の薄い部分をハンマーやペンチで軽く割って入り口を作る。強く叩く必要はない。隙間が生まれれば十分だ。


道具の話。

牡蠣ナイフ(オイスターナイフ)は専用品を使うのが正解だ。先が丸く短い刃は、牡蠣の殻の中を動かすために設計されている。尖った包丁は滑ったとき危険で、薄すぎる刃は折れる。ホームセンターや100円ショップでも手に入る。フランス製のジャン・ネロン「ラ・フルミ」のようなプロ仕様のオイスターナイフも市販されている。

軍手は必須だ。牡蠣の殻の断面はナイフより鋭いことがある。ナイフで切るより殻で切るほうが多い。


養殖場の「打ち子」たち。

プロの世界はまるで別次元だ。広島をはじめ牡蠣の養殖が盛んな産地では、殻むきを専門とする「打ち子」と呼ばれる職人が存在する。熟練の打ち子が殻を剥いた直後の牡蠣は、心臓が動く様子が観察できるほど新鮮で素早い。一日8時間、数百から数千個を黙々とむき続ける。手首の動きは最小限、目は次の牡蠣に向いている。

牡蠣の出荷作業は朝8時から夕方4時の時間厳守で、数人の打ち子が手作業で一個ずつ殻をむいていく。年末にひとつのピークを迎え、最もおいしくなる翌年2月を経て3月頃まで続く。


そして世界記録。

牡蠣むきは競技にもなっている。アイルランド・ゴールウェイで毎年9月の最終土曜日に開催される「世界牡蠣殻むき選手権」は、世界各国の代表が30個の牡蠣を速さと美しさで競う。予選通過の基準は18個を2分以内。スピードだけでなく、きれいに殻から外れているか、身が傷ついていないかも審査される。

ギネス世界記録は、カナダ人のパトリック・マクマレーが保持している。1分間に39個という速度と、1時間で1114個という記録を持つ。1時間で1114個—1個あたり3.2秒だ。普通の人間が牡蠣1個を開けるのに数分かかることを考えると、これが何を意味するかは明らかだ。


極意をまとめると。

こじ開けるな。貝柱を切れ。ナイフは上殻に沿わせる。力より場所。それだけだ。最初の数個は手こずるかもしれない。しかし貝柱の場所をいちど体で覚えると、あとは同じ動作의繰り返しになる。プロが速いのは、その繰り返しを何万回と積み重ねているからだ。

牡蠣は殻ごと買ってくるほうがうまい。むきたての磯の香りは、パックのむき身とは別物だ。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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