カトマンズからポカラへのバス移動に必要なものは遺書かそれとも…

ネパールの首都カトマンズから、ポカラまでの距離はおよそ200キロだ。直線距離ならさほどではないが、バスだと8時間から12時間かかる。渋滞や工事、土砂崩れが重なれば15時間になることもある。

なぜそんなにかかるのか。道路だ。崖すれすれの道も通っていく。バスの事故も多いと現地の人は言っていた。舗装されていない区間があり、曲がりくねった山道が延々と続く。大型トラックと高速ですれ違う。下を見れば崖。バスは構わず進む。なんなら追い越す。座席の位置によっては席からお尻が浮かぶほど揺れる。乗り物酔いする人は薬を飲んでから乗ること。できれば前の方の席を取ること。窓を開けると埃が入り続けること。これが200キロの現実だ。

沢木耕太郎も書いている、たぶん。1974年から1975年にかけて、沢木耕太郎は乗合バスでアジアからロンドンを目指した。その記録が『深夜特急』だ。彼はインドから国境を越え、バスでカトマンズに入っている。雨で未舗装な道に何度もぬかるみ、困難なバス旅の末についたカトマンズ—という描写がある。

ただし、これはインド側の国境からカトマンズへの道(ラクソール→カトマンズ)の話であって、カトマンズ→ポカラ間と同じルートかどうかはわからない。ネパールの道が難路であることは変わらないが、正確を期すためにそのように記しておく。いずれにせよ、あの沢木耕太郎が驚いた道がネパールにあるということだ。

それでも飛行機がある。飛行機なら30分ほど。料金は100ドルから。8〜12時間のバス地獄を、30分で飛び越えられる。追加料金を出せば快適な空の旅だ。合理的に考えれば、飛行機一択だ。

ただし、この区間の飛行機には注意が必要だという声もある。カトマンズ〜ポカラ間は、飛行機の事故頻度が高いことでも有名だ。山岳地帯の気象は変わりやすく、午後は欠航になることも多い。どちらの手段も、それなりのリスクを持っている。

それでも、バスで行きたいのだ。理屈では説明できない部分がある。あの道を自分の体で通ること。カトマンズの街を出て、ネパールの山の中に入り、集落を通り、川を渡り、また山に入る。崖に怯え、揺れに耐え、埃を吸い、10時間かけてポカラに着く。

ネパールがいかに山岳国家かということがよくわかる。もうのろうとは思わないけど、一度は経験した方がいいとは思う—そんな感想が残るのがこのバス旅だ。200キロの距離が、どれほどの意味を持つ土地なのかを、体で知ることができる。それは飛行機では手に入らない何かだ。必要なものは遺書ではない、酔い止めだ。

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tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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