見た目より機能!怪しげな「花粉遮断フード」を被ってでも守りたい、重度患者の切実な事情

毎年春になると日本列島は鼻をかむ音に包まれる。くしゃみ、目のかゆみ、鼻水——花粉症患者にとって2月から5月は災害シーズンだ。そしてその苦しみに比例するように、対策グッズも年々進化を続けている。日本の花粉症産業、真剣勝負の最前線。

花粉症は国民病だ。悩む人が多いほど、それを解決しようとする技術も真剣になる。「ノーズマスクピット」は鼻の穴に直接挿入するフィルターで、マスクを外したシーンでも花粉をブロックできる画期的な発想から生まれた製品だ。花粉だけでなくPM2.5やウイルスも強力にカットする強力版まで展開されている。「マスクをつけられない場面でも花粉が怖い」という悲鳴から生まれた製品であり、実際に愛用者は多い。発想の出発点は純粋に「なんとかしたい」という切実さだ。

サンコー(Thanko)が開発した「USBポレンブロッカー」は、頭からすっぽりかぶるフード型のマスクだ。USBで駆動するファンが内蔵されており、フード内に自分だけの花粉フリー空間を作り出す。養蜂家のヘルメットとハザードマットスーツの中間のような見た目で、花粉を99.9%シャットアウトする。街中でこれをかぶって歩く姿はインパクト抜群だが、それだけ花粉症の症状がつらいということでもある。見た目より機能を選んだ、戦士の選択だ。

首からかける携帯空気清浄機も根強い人気がある。自分の周囲だけをクリーンにするという発想で、重度の花粉症患者には「これがなければ外に出られない」という声もある。ここまで来ると花粉症グッズというより、生存装備という雰囲気だ。

海外に目を向けると、人類は昔からもっと必死だった。現代日本の対策グッズは洗練されているほうで、歴史を振り返ると人類の花粉症対策は相当に混迷していた時代がある。1886年、喉頭科医のE・フレッチャー・イングルス博士はコカインによる花粉症治療を「強く推奨」と論文に書いた。患者は「不快な副作用」を経験し、だんだん量が必要になっていったが、博士は治療を「非常に効果的」と評価した。その理由は、治療を受けた患者が翌年の夏に花粉症症状を一切経験しなかったからだという。現代医学的な理由は「鼻腔の神経と組織が完全に破壊されたから」だ。症状は確かに消えた。消え方が問題だったが。花粉症協会(Hay Fever Association)はコカインを公式治療薬として認定した。時代とはいえ、なかなか豪快な公式見解だ。

1883年にはコペンハーゲンの耳鼻咽喉科医が、花粉症を治療するために「鼻の粘膜の一部を切除する」という手術を行っていた。1904年には、花粉の毒素を注射した馬の血液から作った血清が販売された。馬を花粉で苦しめて抗体を作らせ、その血液を人間に注射するという方法だ。どれも「花粉症をなんとかしたい」という真剣な動機から生まれている。ただ、アプローチに問題があった。

春のくしゃみが止まらない日、鼻にフィルターを挿入しながら「これはコカインよりずいぶんマシだ」と思えば、少しだけ気が楽になるかもしれない。ちなみにこのコラムを書いている人間も、軽度ではあるが花粉症持ちだ。軽度だからまだ普通のマスクで乗り切れているが、これがもっとひどくなれば見た目など気にせず、片っ端からグッズを試すと思う。USBフードだってためらわず頭からかぶるだろう。

花粉症に苦しむ人が真剣に選んだ対策グッズを、見た目だけで笑うのは野暮だ。それを作った企業もまた、誰かの「なんとかしたい」という気持ちに真剣に向き合った結果としてその製品を作っている。見た目より機能を選んだ人を笑わない——それくらいの空気が、花粉の季節には広まってほしいと思う。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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