新スポーツ「へちまチャンバラ」が熱い?

剣道がある。チャンバラがある。そして今、へちまチャンバラがある。 2024年に競技団体「日本へちまチャンバラ協会」が設立され、現在競技人口は着実に拡大中だ。注目すべきはそのルールの独自性と、競技開始までの長い長い助走にある。

まず、育てるところから競技が始まる

へちまチャンバラの最大の特徴は、選手が自分の武器を自分で栽培するところから競技が始まるという点だ。毎年3月の種まき解禁日から、各選手は指定された品種のへちまを育て始める。

武器の優劣は明確だ。長くて太いほど有利。長さは打撃のリーチに直結し、太さは打撃力と耐久性を左右する。つまり栽培技術が、そのまま試合での優位性につながる。

大会エントリーの際には武器届を提出し、公認検査員による計測と品質審査を受ける。基準を満たさないへちまは失格。種まきから大会当日まで、およそ6ヶ月。その全てが競技だ。

ルール概要

国際ルール(18歳以上) 試合は3分1本勝負。有効打突は頭部・胴・小手の三箇所。ただし防具は竹刀競技より薄く、へちまの衝撃が適度に伝わる設計になっている。これが競技の緊張感を生む。

へちまが折れた場合、そのまま試合続行。これが最大の見どころだ。折れたへちまは打撃力が著しく落ちる。しかし放棄は認められない。選手は折れた武器を抱えながら、残り時間を戦い続けなければならない。折れた瞬間に会場がどよめくのは、このスポーツの醍醐味のひとつだ。

試合中にへちまが完全に千切れて手元に何も残らなかった場合のみ、没収負けとなる。

アンダー18ルール 頭部への打突は無効。有効打突は胴と小手のみ。試合時間は2分。また国際ルールと異なり、へちまが折れた時点で一時停止が認められ、折れた断面を審判が確認する「へちまチェック」が入る。断面の繊維が3分の2以上残っていれば続行、それ以下であれば武器交換が認められる。

育てた武器を大切に扱う精神を育てるための配慮だ。


頂点に立つ者が手にするもの

大会優勝者に贈られるトロフィーは、金メッキのへちまだ。実物大、重さ約800グラム。栽培した本物のへちまに金メッキを施したもので、毎年形が微妙に異なる。世界に一つしかない優勝トロフィーだ。

「同じ形のトロフィーが二つとして存在しない競技は、世界広しといえどへちまチャンバラだけだ」と協会は主張している。

大会後の文化——銭湯へちま洗い

試合で使われたへちまは廃棄されない。大会終了後、観客席に向けて配布される。

へちまは乾燥させると天然のスポンジになる。試合で激しく打ち合ったへちまは繊維がほぐれ、むしろ上質なボディタオルとして最適な状態になっているとされる。協会は大会会場近隣の銭湯と提携しており、観客は配布されたへちまを持参すると入浴料が割引になる。

試合を観戦し、選手が戦った武器で体を洗い、湯船で今日の名勝負を語る。これがへちまチャンバラの大会日の正しい締め方だ。

観客が銭湯でへちまを使いながら「あの3回戦の折れたへちまで粘った試合、よかったなあ」と言う。それが、このスポーツが目指す文化だと協会は言う。


次回世界大会は来年夏、開催地未定。エントリー資格は種まきから。

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tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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