江戸時代のスマートスピーカー?「伝統こけし」が現代デザインの正解だった理由

頭が丸くて、胴が円柱。手も足もない。顔だけがある。 改めて見ると、こけしは現代のスマートスピーカーにそっくりだ。AmazonのEchoは円柱で顔がない。AppleのHomePodは丸い。GoogleのNestは楕円だ。みんなこけしの方向に進化している。先に正解を出していたのは江戸時代の東北の木地師だった。

三大産地とその個性

伝統こけしの三大発祥の地は、宮城県の鳴子、同じく宮城県の遠刈田(とおがった)、そして福島県の土湯温泉だ。それぞれ全く違う顔を持っている。

  • 鳴子(宮城県)——音が鳴るこけし
    鳴子系の最大の特徴は、頭を回すとキイキイと音が鳴ること。ガタコと呼ばれる鳴子独特のはめ込み接合のためだ。胴には菊やカエデの華やかな模様。御所人形のような前髪が愛らしい。音が鳴るこけしは、子どものおもちゃとして作られた原点を今も体に残している。おすすめしたい人: 賑やかな場所に置きたい人、子どもへの贈り物に。
  • 遠刈田(宮城県)——最古のこけし
    現在確認されている史実の中で発生年代が最も古く、こけしそのものが遠刈田から発生したと考えられている。頭部に赤い放射状の手絡(てがら)が描かれ、切れ長の目に鼻筋の通った大人っぽい女性の表情が印象的だ。おすすめしたい人: 凛とした美しさを部屋に置きたい人、こけし入門の一本目に。
  • 土湯(福島県)——歌舞伎顔のこけし
    頭に墨の蛇の目模様、クジラ目にたれ鼻、おちょぼ口。歌舞伎メイクのたこ坊主という特徴ある形でも知られる。細い胴に繊細なろくろの横縞模様。三産地の中で最もクセが強く、見る人を選ぶ。おすすめしたい人: 個性的なものが好きな人、こけし沼に深く入りたい人。

縁起の話

伝統こけしは元来、縁起物としての一面を持っていた。湯治場で生まれた土産物であり、病気平癒の願いが込められていた。手も足もないのは「手放さない、足が出ない」=無駄遣いしないという解釈もある。商売繁盛や家内安全の縁起物として飾る家も多い。

背景にある物語

こけしを作るのは「木地師」と呼ばれる職人だ。山で木材を轆轤で挽いて椀や盆を作っていた人たちが、湯治場で売る子ども向けのお土産として顔や模様を描いた木人形を作り始めたのがこけしの始まりだ。

農閑期の副業から始まり、師匠から弟子へ型を継承して200年。すべての工程を一人の職人が手がける。原木から削り出し、顔を描き、仕上げる。その日の職人の気分が顔に出る。怒っているこけし、悲しそうなこけし、ご機嫌なこけしが存在する。同じ工人が作っても二つと同じものはない。

SiriもAlexaもこけし型になる日

丸い頭に円柱の胴。シンプルな顔。手足なし。これはスマートスピーカーの完成形だ。問いかければ答え、音楽を流し、照明を操作する。江戸の木地師が作った形が、AIの時代にもっとも合理的なデザインとして再発見されている。

こけし型のAlexaが出たら買う。そういう人が確実に増えている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

コメント

コメントする

目次