外郎(ういろう)バズる予感しかない。山口スイーツの本命はこれだ

「ういろう」と聞いて、名古屋を思い浮かべた人。それは正しい。ただ、山口にも外郎がある。そして、全くの別物だ。

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貧しさが生んだ、殿様の菓子

名古屋の外郎は米粉が主原料だ。山口はちがう。わらび粉を使う。 理由は切実だった。かつてお米は庶民には高価で、山口では良質なわらび粉が豊富に採れたため、自然とそちらが使われるようになったと言われている。 代用品として始まった。それが室町時代の話だ。

その白外郎は、やがて殿様の口にも届いた。「毛利の殿様外郎で茶を飲む」と詠まれるほど、山口の味として根付いていった。 貧しい土地の工夫が、権力者の嗜好品になる。歴史の逆転劇としては、なかなかの出来だと思う。

山口外郎の食感を地元では「おっとり」と表現する。 もちもち、ぷるぷる、なめらか。そういう言葉は他の菓子にも使える。でも「おっとり」は、山口外郎にしか似合わない。

国宝の前で、外郎を「飲む」

山口市内に国宝がある。瑠璃光寺五重塔。法隆寺、醍醐寺と並ぶ日本三名塔のひとつ。室町時代中期の建造物で、大内文化の最高傑作と評される。 入場は無料だ。長らく続いた約70年ぶりの檜皮葺屋根の全面葺き替えが完了し、2026年3月から全容が見られるようになった。 今がちょうどいい。

写真を撮るなら三つのポイントがある。定番は池の手前から。水面に映る塔と植え込みを意識して一枚。 日が落ちたら話が変わる。日没から22時まで毎日ライトアップされており、三脚使用も可能。池に映る塔のシンメトリーを長時間露出で狙える。 昼間とは別の塔が、そこにある。そして塔の真下まで近づくと、木組みの細部が目に入る。600年近くを経た国宝を、間近で見ることができる。 塔の真下の石碑には、司馬遼太郎『街道をゆく 長州路』の一節、「長州は、いい塔を持っている」と刻まれている。 読んでから見上げると、少し見え方が変わる。

五重塔のほど近く、「5縁カフェ」では小豆のとろとろ外郎にクリームと黒蜜をかけた「飲む外郎」が味わえる。 室町時代の菓子を飲みながら、室町時代の塔を見る。観光のコスパとしては、かなり上位に入ると思う。

作った人の話

老舗が二つある。御堀堂。山口外郎発祥の店「福田屋」の製法を直接受け継いだ、正統な後継者だ。 豆子郎。創業者は満州鉄道のエンジニアだった。菓子職人ではない。それでも寝食を忘れて試行錯誤を重ね、独自の外郎を生み出した。 伝統を守る人と、外から飛び込んだ人。どちらも本気だったから、今も残っている。

「生外郎」は、その日の朝に蒸し上げたものをトラ紙に包んだだけの状態で売られる。賞味期限は2〜3日。 だから、現地でしか食べられない。山口に行く理由として、十分すぎるだろう。

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tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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