競馬場で、馬と並んで歩く

競馬というものがある。馬が速く走って、着順を競う。それが競馬だ。ただし、帯広のそれは違う。

まず、馬が違う

体重1トン前後の巨大なばん馬が、最大1トンの重い鉄ソリを引いて力を競う。サラブレッドのすらりとした美しさとは別の生き物だ。重戦車みたいな馬が、地面を踏みしめながら進む。それだけで見に行く価値がある。

観戦が、一緒に歩く

スタートからゴールまで馬と並んで歩きながら応援できる。馬の息遣いや騎手の掛け声が間近に聞こえる。

高さ1.6メートルの第2障害、この坂が最大の山場だ。馬が坂の前で止まる。息を整える。騎手が声をかける。そして一気に駆け上がる——か、力尽きて止まる。

ゴール直前で動かなくなる馬がいる。怒ってはいけない。馬も頑張っているのだ。それが、ばんえい競馬のドラマだ。

騎手に、推しができる

ばんえい競馬には女性騎手もいる。馬の巨体と向き合い、重いソリを引かせて坂を越えさせる。テクニックと胆力の世界で、互角に戦っている。

レースが終わったあと、柵越しに騎手が歩いてくる距離感。馬の呼吸を読んで「いつ止めて、いつ追うか」を決める。そのドラマを知ると、推しが生まれる。

ルーツが違う

明治時代、馬は北海道開拓の動力だった。農民たちにとって馬は大切な家族の一員で、神社のお祭りで愛馬の力比べをしたのがルーツだ。

速さじゃなく、強さを讃える文化から生まれた競技だ。だからこそ、ゴール前で止まった馬に拍手が起きる。

令和のプロポーズは、これに決まり

協賛金を払うと、自分の名前をつけた「冠レース」が開催できる。レース名は実況や出走表にも掲載され、ゴール後には表彰式でプレゼンターになることも可能だ。

「○○さん、結婚してください杯」。

場内アナウンスで読み上げられる。馬が坂を越える。観客がざわつく。隣にいる彼女も、ざわつく。

ゴールした瞬間に指輪を出す。

断られても、レースは続く。馬は関係ない。

レースの後に

引退したばん馬やポニーにえさをあげられるふれあい動物園、十勝名物の豚丼が楽しめるとかちむら。冬に行けば、マイナス20度の中、馬体から白い湯気が立ち上がる。

馬に会って、食べて、感動して帰る。それだけで十勝の一日が完成する。

世界で唯一、帯広競馬場だけで開催されている。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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