サリサリニャーマに行きたい。でも今は行けない

地球上に、まだ「底が確認されていない穴」がある。

ギアナ高地のサリサリニャーマというテーブルマウンテンには、直径350メートル、深さ350メートルにも及ぶ巨大な陥没穴が複数存在する。 穴の中はほぼ垂直な断崖になっていて、鳥類の往来を除いて穴の内部と外部はほぼ隔絶されており、独自の生態系を築いている。 

外界と断絶された穴の底に、誰も知らない生き物がいる。そういう場所が、2026年の地球にまだある。

ギアナ高地のテーブルマウンテンは「テプイ」と呼ばれ、先住民ペモン族の言葉で「神々の住処」を意味する。 

サリサリニャーマという名前は、ジェクアナ族の言い伝えに由来する。山の中に棲む悪霊が人間を食べるときの「サリサリ」という音から来ているとされる。 

神々の住処に、人を食う悪霊がいる穴が開いている。命名センスが本気だ。

これまでに発見された約4000種の植物のうち、70%ほどがギアナ高地のテーブルマウンテンにしか生育していない種だ。垂直な断崖によって外界から閉ざされているため、生物の行き来がほとんどないからだ。 

地球が20億年かけて作り上げた隔離実験が、今もそこで続いている。

コナン・ドイルは小説『失われた世界』でこの地を描いた。ジュラシックパークはその着想を得て生まれた。恐竜はいないが、それに近い何かはいるかもしれない。

行くにはどうするか。

日本からの移動は直行便がないため最低2〜3日。カラカスから国内線でプエルトオルダスへ約1時間、そこからセスナでカナイマへ。サリサリニャーマ観光は1日。 

ただし、問題がある。

外務省は現在、ベネズエラ全土に危険レベル3「渡航は止めてください」を発出している。 

米国市民を中心に、ベネズエラ当局から明確な理由もなく長期間拘束される事案が相次いで発生している。現在、ベネズエラ政府は外国人に対してスパイや政府転覆の意図があるのではないかとの疑心暗鬼が極めて強い状態にある。 

穴の底に行く前に、空港で消えるかもしれない。

だからこそ、行ける日を待っている人がいる。

20億年前から存在する穴だ。今すぐ行けなくても、穴は逃げない。治安が回復したとき、そこに真っ先に向かう人間になりたい。

その日まで、「サリサリニャーマ」という名前だけ、覚えておいてほしい。

悪霊が人を食う音が由来の、地球で最も奇妙な穴の名前だ。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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