旅行に行く前、加湿器をつけたまま出た。「自動給水だから大丈夫」という根拠のない自信があった。自動給水というのは、タンクの水がなくなったら自動で止まるのではなく、水道から自動で補充し続けるタイプだ。つまり止まらない。永遠に動き続ける。熱海に3泊した。
帰宅
玄関のドアを開けた瞬間、何かが違うとわかった。空気が重かった。熱海の海沿いの空気とは別の意味で、湿っていた。室内なのに、外にいるような感覚があった。もっと正確に言うと、温泉の脱衣所に入ったときのような感覚があった。
湿度計を見た。99%だった。機器の上限が99%だったので、実質100%だったと思われる。
部屋の状態
壁が濡れていた。窓ガラスの内側に水滴がびっしりついており、それが流れて窓枠に水たまりができていた。テーブルの表面がしっとりしていた。積んでいた本の表紙が波打っていた。木製の椅子の座面が微妙にふくれていた。押し入れを開けると、中の空気がもわっとした。布団は……見なかったことにした。
加湿器の様子
加湿器本体は元気よく稼働していた。3泊分の水分を部屋に放出し終えて、なお現役だった。フルパワーのまま、何の問題もなさそうな顔をしていた。電源を切った。「おつかれさま」と言いそうになったが、言わなかった。
気づいたこと
人間が不在の部屋に湿度100%の空気が3日間充満すると、部屋はゆっくりと熱帯雨林に近づいていく。カビの発生を本気で心配した。窓を全開にして換気したが、4月の外気も十分に湿っていたため、焼け石に水という感じがした。
スマートフォンの充電器のコネクタ部分に水滴がついていた。電子機器への影響を調べ始めたが、怖くなって途中でやめた。
教訓
自動給水の加湿器は、人間がいない部屋では単なる「無限水分放出装置」だ。自動なのは給水であって、判断ではない。判断するのは人間の仕事だった。
旅行前にスイッチを切るという、当たり前の行動が、なぜできなかったのか。答えは「なんとなく大丈夫と思った」だ。熱海の温泉は最高だった。帰宅した部屋も、ある意味で温泉みたいだった。

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