本屋が消えている——しかし最後の奥義がある

街から本屋が消えている。日本の書店数はピークだった1990年代の約2万6000店から、現在は1万店を割り込んでいる。30年で半数以上が消えた。全国には書店が一軒もない「書店ゼロ地区」の市町村が全体の4分の1を超えている。

Amazonは便利だ。検索して、ポチって、翌日届く。反論の余地がない。しかし街から本屋が消えていいのかという問いは、便利さとは別の話だ。文部科学省の調査によると、家庭の蔵書数が多いほど子どもの学力が高い傾向があるという。本が身近にある環境そのものが、知の土台を作る。検索では探せないものと偶然出会う場所が、静かに失われている。

では本屋を救う手はあるのか。政策でも補助金でもなく、もっと即効性のある方法が。ある。

青木まりこ現象という希望

1985年、「本の雑誌」の読者投稿欄に一通の手紙が届いた。差出人の名前は青木まりこ。内容はシンプルだった。「本屋に行くとなぜかもよおす」。

編集部が軽い気持ちで誌面に掲載したところ、全国から「自分もそうだ」という声が殺到した。現象は差出人の名前をとって「青木まりこ現象」と命名され、以来40年、未解明のまま今日に至っている。

原因については諸説ある。本のインクの匂いが腸を刺激するという説、立ち読みの姿勢が腸に圧をかけるという説、リラックスすることで副交感神経が優位になるという説。どれも決定打に欠け、学術的にはいまだ「謎」に分類されている。人類は宇宙の起源を研究しながら、本屋でなぜもよおすかを40年間解明できていない。

活用法

便秘気味の日は本屋に行く。目的の本がなくてもいい。ただ棚の間をぶらぶら歩く。文庫、新書、ビジネス書、料理本。気づいたころには腸が主張し始める。

注意点がひとつある。本屋にはトイレがないことも多い。青木まりこ現象を活用する際は、事前にトイレの場所を確認してから入店することを強く推奨する。現象は予告なく発動する。

そして用を足し終えたら、一冊だけ本を買って帰る。便秘が解消された記念に。たまたま手に取った一冊でいい。


腸が整い、本屋が潤い、家庭の蔵書が増える。青木まりこ現象は便秘薬であると同時に、街の本屋を救う経済対策であり、子どもの学力向上策でもあった。万事解決である。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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