木の小片に、指でつまめるネジが一本刺さっている。それだけだ。そのネジをくるくると回すと、「キュッキュッ」という音が鳴る。小鳥のさえずりに似た、小さくて澄んだ音だ。これがバードコールと呼ばれる道具の全てで、構造の説明は以上で終わる。
かつてアウトドアショップの隅に必ず置いてあったこの道具は、いつの間にか店頭から姿を消した。スマートフォンで鳥の鳴き声を再生できるようになった頃から、木とネジだけの原始的な道具は時代遅れに見えたのかもしれない。しかし待ってほしい。
本当に鳥は来るのか
バードコールの仕組みは木に金属がこすれるときの摩擦音だ。その音が鳥のさえずりに似ているため、仲間の声と勘違いした鳥が鳴き返したり、近くに寄ってきたりする効果がある。
ただし「必ず来る」とは言えない。鳥の種類、場所、季節、そして腕前によって大きく結果が変わる。池の鴨には完全に無視された一方、林の中で鳴らし続けると5分ほどでスズメが近くまで寄ってきたという報告もある。バードウォッチング中の人が「普段は聞かない鳴き声だと思って来てみた」と声をかけてきた例もある。つまり鳥よりも先に人間が反応することもある。
達人の技
音を出すこと自体は簡単だが、鳥を引き寄せるような音を出すには慣れとセンスが必要だ。手首の回し加減、力の込め具合、速度の変化——これらを組み合わせることで音色が変わる。松ヤニをネジの先端に塗ると音が出やすくなる。
上手くなると何種類もの鳥の声を鳴らし分けることもできる。木の種類によっても音が変わるため、複数のバードコールを持ち歩く愛好家もいる。シンプルな道具ほど、極めるのに時間がかかる。
ひとつ注意がある。繁殖期(春から初夏にかけて)は鳥が神経質になっているため、バードコールを鳴らしすぎると巣を放棄する危険性がある。この時期は使用を控えるのがマナーだ。
どこで手に入るか
アウトドアショップのほか、現在はAmazonや登山用品店でも購入できる。定番はアメリカの鳥獣保護団体オーデュボンのもので、1世紀以上のロングセラーだ。国産では山桜材を使ったA&Fの「JAMASAKURA」が評価が高い。鈴木楽器製作所からは子ども向けの組み立てキットも出ており、自分で削り出すタイプも存在する。価格は1000円前後から。
子どもに与えるべき理由
スマートフォンで鳥の鳴き声を再生することと、木とネジで鳴き声を作り出すことは、まったく違う行為だ。前者は再生ボタンを押すだけで結果が出る。後者は力加減を試行錯誤しながら、自分の手で音を育てていく。
鳥が来るかどうかもわからない。来ないかもしれない。でもその「来るかもしれない」という時間の中で、子どもは耳を澄ます。結果の保証されない遊びこそ、子どもに挑戦させてみるべきだろう。

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