飛行機なし、片道24時間。それでも小笠原へ行くべき理由とは?

東京から南へ1,000キロ。飛行機がない。小笠原諸島へのアクセスは、竹芝桟橋から週1便出航する定期船「おがさわら丸」のみだ。父島まで片道24時間。これは不便なのではない。これが旅の始まりだ。

東京湾を出るとまもなく、スマホの電波は消える。船内には有料Wi-Fiもあるが、この24時間をデジタルデトックスの幕開けとして使う手がある。デッキで海と星空を眺め、本を読み、見知らぬ乗客と話す。竹芝で乗り込んだ時点で、もうその旅は始まっている。

島に着いたら

翌朝11時、おがさわら丸は二見港に入港する。船を降りると、島の人たちが出迎えてくれる。

島に大型ホテルはない。個人経営の民宿やペンションが中心だ。温泉もない。そのかわり、宿の主人が島を案内してくれたり、夕飯に地の魚が出てきたりする。

父島の集落は小さい。飲食店はメインストリート1本裏のオレンジ色の道沿いに集まっている。夜は静かで、星が多い。

探検スポット

南島——父島の南西約1キロの海上に浮かぶ石灰岩の無人島。上陸にはガイドツアーへの参加が必要。砂浜は白く、海はボニンブルーと呼ばれる色をしている。

乳房山トレッキング——小笠原諸島最高峰・標高463メートル。大陸と一度も陸続きになったことがない小笠原では、自生種の約4割が固有種。亜熱帯のジャングルをエコツアーガイドと歩く。

夜のナイトツアー——夜の森では、暗闇の中で緑色に光る夜光茸(グリーンペペ)が見られる。天然記念物のオガサワラオオコウモリが飛ぶ姿に驚くこともある。人工光の少ない小笠原のスターウォッチングは格別だ。

戦跡——太平洋戦争中、硫黄島への中継地だった父島の森には、発電所跡や壕など戦跡が残り、爆弾がさく裂した痕が今も見られる。

母島——父島からははじま丸でさらに2時間。固有種のハハジマメグロが生息し、外敵を知らないため人を恐れない。日本一遠い秘境の雰囲気がある。


食べるもの

島寿司はサワラなどの白身魚を醤油漬けにしたにぎり寿司で、わさびの代わりに洋がらしを使うのが特徴だ。

ウミガメ料理も名物で、刺身・にぎり寿司・煮込みと種類が豊富。肉と赤身の魚の中間のような味わいで、臭みはない。

地酒はラム酒。近年は海底熟成のラムや、パッションフルーツとあわせたリキュールがお土産に人気だ。

お見送りのこと

旅のクライマックスは、帰る時だ。おがさわら丸が出航する午後3時前になると、自然と島民が二見港に集まってくる。小笠原太鼓の演奏が始まり、港から手が振られる。

そしてリゾートボート、漁船、ガイド船が並走し、父島が見えなくなる頃、「いってらっしゃい」の掛け声とともに、乗っていた人々が一斉に海へ飛び込む。

「またきてね」ではなく「いってらっしゃい」。この島では、旅人が帰ることを、旅立ちと呼ぶ。


スマホをいくら叩いても、この海の色は出てこない。この太鼓の音も、飛び込む水しぶきも、「いってらっしゃい」という声も。

本物の体験というのは、電波の届かないところにある。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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