国防を語るとき、人は最新鋭の戦闘機を思い浮かべる。ステルス性能、極超音速ミサイル、AIによる自律制御。各国が兆円単位の予算を注ぎ込んで開発を競う世界だ。しかし、本当にそれでいいのか。
「神の杖」という兵器構想がある。衛星軌道からタングステンの棒を落下させ、核兵器並みの破壊力を生み出すというアメリカの研究だ。大気圏突入時の速度と質量だけで、爆発物なしに都市を壊滅させられる。
これを、こけしでやる。
なぜこけしか
タングステンは非常に重い金属だ。密度は鉄の約2.5倍で、鉛よりも重い。これをこけしの形に削り出す。丸い頭、細長い胴体、どこか穏やかな表情。職人が丹精込めて仕上げる。
それを衛星から落とす。着弾する。爆発はない。音もほぼない。ただ、タングステン製こけしが、マッハ数十で地面に刺さっている。
敵国の混乱
衛星が何かを落とした。レーダーが反応した。着弾点に向かった偵察隊が発見したのは、地面に垂直に刺さったこけしだ。全長80センチ、直径20センチ、重量およそ300キログラムのタングステン製こけし。穏やかな目が、地面から生えている。
報告書に何と書くか。誰も知らない。「こけし型飛翔体、着弾」と書く将校の顔を想像してほしい。国連安保理の緊急会合で「こけし」という単語が飛び交う場面を想像してほしい。

実用上の優位性
通常の「神の杖」は棒状のため、着弾点に「金属棒が刺さっている」という状況になる。これは軍事攻撃として明確に認識される。こけしなら、攻撃かどうか判断がつかない。
「もしかして落とし物では」という可能性が、ゼロではない。誰かが宇宙でこけしを落とした。拾いに来た。そういう解釈の余地が、わずかながら存在する。その「わずかな解釈の余地」が、外交交渉の時間を生む。
量産体制
宮城県の遠刈田こけし、福島県の土湯こけし、岩手県の南部こけし。各産地の職人がタングステン削り出しの技術を習得する。国防省と経済産業省と文化庁が合同でプロジェクトを立ち上げる。
「タングステンこけし衛星落下システム」という名称では予算が通りにくいので、正式名称は「伝統工芸品活用宇宙防衛構想」とする。通る気がする。
結びに代えて
こけしは本来、子供への愛情から生まれた。その存在が、衛星軌道からマッハ数十で地面に刺さる日が来るとは、作った職人も思っていなかっただろう。
しかし時代は変わる。こけしも変わる。ただし表情だけは、穏やかなままだ。

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