スマートフォンが登場して約20年。人類は首を痛めながら、視界を塞ぎながら、片手を潰しながら、毎日何時間もガラスの板を見つめ続けてきた。
立ち止まって考えてみると、これはかなりおかしい。
スマホの欠陥を誰も指摘しない
スマホは革命的だった。しかし欠陥だらけでもある。首は前傾姿勢で慢性的に痛み、視野は画面に占領され、片手は常に塞がれ、ポケットからいちいち取り出す動作を一日何十回も繰り返す。
ジョブズが生きていたら、この状況を見てなんと言っただろうか。「まだそれを使っているのか」と言いそうだ。
メタは正解に近づいている
MetaはConnect 2025でMeta Ray-Ban Displayを発表した。レンズ内にフルカラーの高解像度ディスプレイを内蔵し、さらにニューラルバンドと呼ばれるリストバンドと組み合わせて手の動きで操作できる。
ニューラルバンドは筋電図センサーで手首の筋肉の動きを検出し、指のジェスチャーをデジタル信号に変換する。公共の場での不自然な音声コマンドも、フレームの小さなボタンを触る動作も不要になる。手が自然に下ろした状態でも操作できる。
つまり、メガネで見て、手首で操作する。スマホを取り出さなくていい世界が、もう目の前にある。
移行の正しい順序
ただし、いきなりスマホを捨ててメガネだけにするのは無理だ。
正しい順序はこうだろう。まずメガネで音と通知を受け取りながら、スマホは補助デバイスとして残す。メガネへの依存度を少しずつ上げていく。気づけばスマホを取り出す回数が減っていく。1日10回が5回になり、3回になり、やがて「財布と同じ扱い」になる。
EssilorLuxotticaは2025年末までにRay-Banスマートグラスの生産能力を年間1000万台に拡大すると発表しており、ニッチなデバイスではなくファッション消費製品として扱い始めている。
その過程で、スマホに求められる役割が変わってくる。
スマホの役割が変わるとき、形も変わる
メガネが情報表示と音声を担うようになると、スマホに大きな画面は要らなくなる。
残る役割は支払い、カメラ、緊急時の入力、そしてバッテリー補助。それだけなら、今のスマホの形である必要はない。むしろ大きなガラス板は邪魔になる。落としたら割れる、滑る、握りにくい——スマホの形そのものが問題になってくる。
そこで登場するのが、こけし型デバイスだ。
こけし型という答え
円筒形で、手にしっかり馴染む。落としても割れない。ポケットにすっと入る。画面がないから傷もつかない。操作はメガネとニューラルバンドに任せればいい。
さらに、こけし型には愛着が生まれる。推しのキャラクターの顔にカスタマイズできる。スマホケースの比ではない個性が出せる。薄いガラスの板に人は愛着を持てなかったが、形のあるものには愛着が生まれる。民芸品がそうであったように。
支払い機能、緊急用マイク、カメラ、バッテリー——全部こけしの中に入れてしまえばいい。
拡張現実への扉
メガネで世界を見て、こけしを握りながら歩く。
その組み合わせが、拡張現実への自然な入口になる。ゴーグル型のVRが普及しなかったのは、日常に馴染まなかったからだ。メガネなら普通にかけていられる。こけしなら普通に持ち歩ける。
気づいたら現実と情報が重なった世界の中にいた——それが、次の20年だと思う。
スマホとこけしが、拡張現実への扉を開く。

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