アメリカには壮大な観光地がある。グランドキャニオン、イエローストーン、自由の女神。世界中から人が押し寄せる場所がある。しかし今回紹介するのは、その逆だ。
カンザス州レバノン、人口217人
カンザス州レバノンの町外れ、ハイウェイ191号線の突き当たりに、高さ約2メートルの石造りのピラミッド型モニュメントがある。真鍮のプレートにはこう書いてある。「アメリカの地理的中心点」。
隣にあるのは、6人しか座れない小さなチャペル。ピクニックテーブル。そして長年閉まったままのモーテル。
近くに何かあるかというと、何もない。どこからもかなり遠い。他の観光スポットへのアクセスも悪い。訪れた人のレビューによれば「2〜3枚写真を撮って立ち去った」が標準的な滞在時間だ。
実は本当の中心点ではない
このモニュメントが設置されたのは1940年のことだ。地元の「ハブクラブ」という団体が、観光客を呼び込もうと設置した。しかし問題があった。本当の地理的中心点は、ここから約1.2キロ離れた豚農場の真ん中だったのだ。農場主のジョニー・グリブ氏が観光地化を拒否したため、近くの丘の上に代わりのモニュメントが置かれた。
つまりここは「アメリカの中心に近い丘の上」だ。アメリカの中心ではない。
さらに1959年にアラスカとハワイが州に加わったことで計算が変わり、50州全体の地理的中心はサウスダコタ州ベル・フォーシュ付近に移動した。レバノンのモニュメントは今や「本土48州の、中心に近い場所」という肩書きで立っている。
観光地として失敗したモーテル
かつてレバノンの町はこのモニュメントが大きな観光地になると期待し、モーテルを建設した。しかしモーテルは数十年前から閉鎖されたままだ。
カンザス州は片道1マイルの道路舗装まで費用を出した。しかし観光客は来なかった。来ても、5分で帰った。
それでも人は来る
不思議なことに、このモニュメントには今も訪れる人がいる。「ここに来たと言えるから」という理由で来る人たちだ。アメリカの中心に近い場所に立ったという事実を、写真に収めて帰っていく。

より引用
入場は無料で、年中無休、24時間開放されている。記念グッズはレバノンの町のお店でポストカードとマグカップが買える。
地味すぎる観光地が、地味すぎるがゆえに一周してネタになる。アメリカという国の広さと、人間の「とりあえず行ってみる」精神が生んだ、奇妙な聖地だ。

コメント