神々の街の屋根の上で、焼き鳥屋のハウス七味を見つけた話

カトマンズのダルバール広場には、屋根の上に登れる寺院がある。

マジュ・デガと呼ばれるシヴァ寺院で、広場の一角にそびえる石造の基壇を持つ多重塔だ。観光客も地元の高校生も、普通に最上段まで登っていく。

特に柵もない。禁止の看板もない。ただそこにある階段を登ると、向かいにはシヴァとパールヴァティの彫刻が施された寺院、旧王宮ハヌマン・ドカ、喧騒のカトマンズ旧市街が一望できる。

屋根から降りた先

広場をぶらぶらしていると、焼き鳥屋があった。

タメル地区周辺には、バックパッカー向けの飲食店が集まっていて、日本式の焼き鳥を出す店もある。串に刺さった鶏肉が炭火で焼かれている。煙が路地に流れている。

テーブルに座って注文した。

出てきた焼き鳥の横に、小さな瓶が置かれていた。

ハウスの七味唐辛子だった。

なぜここに

間違いなくハウスの、あの赤いキャップの瓶だった。

焼き鳥に七味。日本では当たり前の組み合わせだ。しかしここはカトマンズだ。ヒマラヤの麓の、神様が寺院の屋根にぎっしり彫り込まれた街だ。

海外向けのS&B・ハウスの七味唐辛子は、輸出専用の仕様で製造されており、日本国内向けに使われている麻の実とけしの実を白ごまと生姜に置き換えている。海外の法規制に対応した別物だ。

つまりこの七味は、ネパールに輸出されるために中身を少し変えて、カトマンズの焼き鳥屋のテーブルにたどり着いていた。

七味唐辛子は日本食ブームに乗って、うどんや焼き鳥に伴う定番の調味料として世界中に広まりつつあるという。

日本食が世界に出ていくとき、七味もついていく。焼き鳥が行くところに、七味がある。そういうことらしい。

スパイスの旅

カトマンズはチベットとインドを結ぶ交易の要衝として古くから栄えた街で、そこでヒンドゥー教と仏教が融合する独特の文化が育った。

何百年も前からあらゆるものが流れ込んできた街に、日本のスパイスブレンドが混ざり込んでいる。

神様の屋根の上に登ったあとで、焼き鳥に七味をかけた。

旅は時々、こういう角度で日常と非日常を交差させる。

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tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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