スリナムの飲み物は、世界の縮図だった

スリナムはどこにあるか。南アメリカの北東沿岸、ブラジルの上にある小さな国だ。人口60万人ほど。公用語はオランダ語。かつてオランダの植民地だった。この国の飲み物を調べると、歴史の複雑さがそのまま出てくる。

ダウェット——ジャワ島からの旅人

街の屋台でよく見かける飲み物に「ダウェット」がある。インドネシア・ジャワ島が起源の飲み物で、レモングラスシロップ、ココナッツミルク、若いココナッツの果肉で作る。ピンク色が特徴で、スリナムではスラッシュ(かき氷状)にして飲むのが定番だ。

なぜ南アメリカにジャワ島の飲み物があるのか。植民地時代、オランダはインドネシアからジャワ人を労働者としてスリナムに連れてきた。彼らが故郷の飲み物をそのまま持ち込み、スリナムの気候と食文化に溶け込んでいった。飲み物は人と一緒に移動する。

フェルナンデス——秘密のレシピで90年

スリナムのソフトドリンクといえばフェルナンデスだ。1933年、パラマリボのフェルナンデス家が自家製のソフトドリンクを作り始めた。1940年代にクリームジンジャーとゴールデンオレンジ、1950年代にグリーンパンチが登場した。フレーバーの作り方は今も一族の秘密だ。

クリームジンジャーというフレーバーは、ジンジャーエール系でもなく、生姜の辛さを残しつつどこかクリーミーという独特の味で、スリナム人にとって「故郷の味」の象徴になっている。

1970年代、スリナム人がオランダへ移住するときにフェルナンデスのガラス瓶を荷物に入れて持ち込んだ。あまりに多くの瓶がオランダへ渡ったため、スリナム国内で瓶が不足する事態が起きた。瓶を持って海を渡るほどの愛着。それがフェルナンデスという飲み物の立ち位置だ。

マリエンブルク90%——飲む人を選ぶラム酒

スリナムはラム酒の産地でもある。マリエンブルク・ホワイトはアルコール度数90%のラム酒で、スリナムで最もよく売れるラム酒のひとつだ。フレーバーはほぼなく、カクテルベースとして使われる。

90%というのは、ウォッカの一般的な度数(40%)の2倍以上だ。ストレートで飲む飲み物ではなく、何かに混ぜることを前提に作られている。スリナムの人々がラム酒をどれだけ日常的に扱っているかを示す数字でもある。

ゲンベルビール——クレオールのジンジャードリンク

アルコールなしの伝統飲料として「ゲンベルビール(Gemberbier)」がある。クレオール系の伝統的なジンジャードリンクで、生姜を煮出して作る。祝いの席や集まりでよく飲まれる。

名前に「ビール」とあるがアルコールは入っていない。ビールのような発酵感を目指したのか、あるいは単に泡立つ飲み物という意味なのか、由来は定かではない。

この国の飲み物が教えること

スリナムの飲み物には先住民、アフリカ系、インド系、中国系、ジャワ系の影響が混ざり込んでいる。

ダウェットはジャワ島から。フェルナンデスはオランダ植民地時代の産物。ラム酒はサトウキビ農園の歴史と不可分だ。飲み物の種類を見るだけで、この国がどういう歴史を歩んできたかがわかる。一杯の飲み物が、そのまま歴史の教科書になっている国がある。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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