日本の宝、とんぶりを世界へ

秋田県大館市にしか、ほぼ存在しない食べ物がある。とんぶり。直径1〜2ミリの小さな緑の粒だ。

見た目はキャビアそっくりで、食感もプチプチとよく似ている。しかしこれは魚の卵ではない。植物の種だ。

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とんぶりとは何か

とんぶりはホウキギという一年草の実から作られる。ホウキギはその名の通り、かつては乾燥させた枝を束ねてほうきとして使ってきた植物だ。

秋になるとその実を収穫し、釜で煮て柔らかくした後に揉みほぐし、外皮や茎を丁寧に取り除くことで、プチプチとした粒だけが残る。

日本でとんぶりを生産しているのはほぼ秋田県大館市のみで、「大館とんぶり」として地理的表示(GI)にも登録されている。世界でここだけ。それがとんぶりだ。

味と食感

とんぶり自体の味はほとんどない。無味無臭に近い。しかし口に入れると、プチプチと弾ける独特の食感は一度食べたら忘れられない。

クセがないからこそ、和洋中どんな料理にも応用できる。

本物のキャビアのような濃厚な塩気はない。しかしそれがむしろ武器だ。どんな食材の味も邪魔しない。食感だけを加える、世界でも稀な食材だ。

栄養の話

見た目は地味だが、中身は豪華だ。

とんぶりは緑黄色野菜に分類される。100グラムあたりのカロテンは800マイクログラムと豊富で、体内でビタミンAに変換され、目の健康、皮膚や粘膜の強化、免疫力アップをサポートする。カロリーは89キロカロリーと低め。食物繊維、カリウム、鉄、ビタミンE、ビタミンK、葉酸も含まれる。

食物繊維は100グラム中7.1グラムと非常に豊富で、ゴボウを上回る。不溶性食物繊維の比率が高く、腸壁を刺激して便通を改善し、大腸がんの予防にも有効とされる。

含まれるサポニンには血糖値の上昇を抑える効果があり、高血圧の予防やアルコールの吸収を緩やかにして悪酔いを防ぐ作用もあるとされている。

小さな粒に、これだけのものが詰まっている。

おすすめの食べ方

秋田では山芋や納豆、大根おろしと混ぜて酒の肴にするのが最も一般的だ。しかしとんぶりの可能性はそこにとどまらない。

ポテトサラダに混ぜると食感が楽しくなる。ペペロンチーノのトッピングにすれば、にんにくとオリーブオイルの風味を邪魔せずプチプチ感だけが加わる。油揚げの袋煮に入れれば、だしと絡んで別の顔を見せる。

豆腐にのせれば「畑の肉」と「畑のキャビア」の共演になる。ツナマヨに混ぜておにぎりの具にするのも面白い。

要するに、何に入れてもいい。それがとんぶりの強みだ。

世界におけるとんぶり

とんぶりはキヌアと同じアカザ科の植物の仲間だ。スーパーフードとして世界中に普及したキヌアと、栄養的にも植物的にも近い存在だ。

キヌアはペルー原産の無名の穀物から、世界中のスーパーマーケットに並ぶスーパーフードになった。その鍵は「栄養価が高く、クセがなく、どんな料理にも合う」という特性だった。

とんぶりは、その条件を全て満たしている。

「ジャパニーズキャビア」という呼び名はすでにある。見た目のインパクトは十分だ。栄養は申し分ない。味は邪魔をしない。あとは、知られるだけだ。

秋田の小さな畑から、世界の食卓へ。とんぶりにはその資格がある。

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この記事を書いた人

tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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