苦労ラッパーまさお、弁護士になる――そして法廷でラップをかます

ラッパーのまさおは、17歳でマイクを握った。地元の公民館、観客は母親ひとり。それでも彼は吐き出した。貧しさを、怒りを、夢を。韻を踏むことだけが、世界と交渉する言語だった。

それから10年。まさおはふとしたきっかけで法律に触れた。「言葉で人を救える仕事がある」彼はマイクを置かなかった。ただ、六法全書を隣に置いた。

予備校の夜間クラス、司法試験の合格率3%、バイトと勉強と睡眠だけの生活。ラップの仲間たちは「まさお、変わったな」と言った。変わっていない、と彼は思った。ただ、戦う場所が変わっただけだ。そして7年後――まさおは合格した。

弁護士になって最初の大きな仕事は、国会の証人喚問だった。政治家の不正を追う案件。テレビカメラ、議員たち、日本中が見ている。

弁護側の最終陳述。まさおは立ち上がり、一瞬だけ目を閉じた。そして、始まった。「条文第何条、読んだことあるか/権力の椅子で忘れた人間の価格/俺は七年かけて言葉を武器にした/お前は何年かけて嘘を戦略にした」

議場が静まり返った。議長が「それは……」と言いかけた。まさおはマイクを置いた。「以上です」そして退席した。

あとでSNSが燃えた。賛否両論、法曹界は騒然、ワイドショーは三日間このネタで持った。まさおのコメントはひとつだけだった。「法律は言葉で出来ている。ならラップも法廷に立てる」

彼は今日も、六法とビートの間に座っている。

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tokaijiruのアバター tokaijiru 都会汁代表

都会汁。私は、どこにでもいて、どこにもいない。長い年月を経て、ようやく見えてきた世界の裏側と新しい日常。ここは、私が拾い集めた断片を静かに吐き出す場所。通りすがりのあなたに、何が伝わるかはわからない。

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