都会で、すまし顔でパスタを巻いたり、意識高いラテを飲んだりしているうちに、私たちの体には「都会汁」という名のドロドロした何かが溜まっていく。
そんな毒素でパンパンになった体をリセットしたいなら、ベトナムの古都フエにある、とんでもない「毒出しメシ」を食うしかない。
その名は、コムヘン(Cơm Hến)。
見た目は、その辺の道端で拾ってきたような「ただの冷や飯」だ。だが、侮るなかれ。これは、都会の虚飾を剥ぎ取るための、もっとも野蛮でエレガントな儀式なのだ。
1. 口の中が「異種格闘技戦」の会場になる
一口食べた瞬間、脳がバグる。
「カリカリ」の豚皮が弾けたと思えば、「シャキシャキ」のハーブが襲来し、間髪入れずにピーナッツが「ボリボリ」と主張してくる。そこに、川の底から救い出されたシジミの、泥臭くも力強い旨味がドカンと加わる。
さらに、ここに「マムルォック」という、エビを腐る寸前まで発酵させた、鼻がひん曲がるような激ヤバ調味料をぶち込む。
都会の「小綺麗な味」に慣れた舌には、これが効く。強烈な香りと旨味のビンタを食らっているうちに、溜まっていた都会のストレスが、脳の隙間からポロッとこぼれ落ちていくのがわかるはずだ。
2. 灼熱の「追いチリ」と、聖水「Hudaビール」
さらに自分を追い込むなら、卓上のチリソースをドバドバ入れるのがフエ流だ。
喉が焼け、顔中から汗が噴き出す。この汗こそが、体内に溜まった都会汁の排出に他ならない。
そこで、救世主「ビール・Huda(フーダ)」を召喚する。
ベトナムのビールは、デカい氷をぶち込んで飲むのがお約束。「ビールを薄めるなんて!」という固定観念すら、都会汁が溜まっている証拠だ。氷でキンキンに冷え、もはや水に近いレベルまで薄まった黄金の液体は、焼けた喉を優しく洗い流す「聖水」に変わる。
この、激辛コムヘンと氷ビールの無限ループ。これこそが、フエに伝わる究極のデトックスなのだ。
3. 足元にゴミを捨て、「自分」を取り戻せ
行儀よく食べる必要なんてさらさらない。使い古したティッシュやライムの搾りカスは、そのまま床へポイだ。
足元がゴミで散らかるほど、貴方の心は軽くなっていく。テーブルの上を綺麗に保とうとするその「気遣い」こそが、都会汁の正体なのだから。
結び:王様も、実はデトックスしたかった
かつての王様も、豪華すぎる宮廷料理に胃もたれし、都会汁(当時の都の毒)に蝕まれていたのだろう。だからこそ、この庶民の「冷や飯シジミぶっかけ」を食べて、正気を取り戻したに違いない。
洗練された都会の毒にやられそうになったら、フエの路上でプラスチックの低い椅子に座り、一心不乱にコムヘンを掻き込んでほしい。
最後の一粒を飲み干し、氷ビールのグラスを置くとき。貴方の体からは、あの濁った都会汁が綺麗さっぱり消え去っているはずだ。

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