不可能ではない。断言する。ただし、誰かが動かなければ何も変わらない。規制が壁なのではない。動く人間がいないことが壁だ。
帯広という前例がある。北海道帯広市。もともと屋台文化などなかった街だ。あったのは「連売市場」という路地マーケットで、その中心だった一条市場は1998年に火災で焼失し、跡地は19台の月極駐車場になっていた。シャッター、空洞化、にぎわいの消滅。日本中どこにでもある話だ。
しかし帯広の有志たちは動いた。「屋台」というキーワードに注目し、調査研究を重ね、その駐車場に屋台をズラリと並べ、もう一度にぎわいを取り戻そうとプロジェクトをスタートさせた。
2001年オープン。飲食店営業の許可を得ることで、従来の屋台では出せなかった刺身などの生ものも提供できるようにした。上下水道、電気、ガス、水洗トイレも完備。北海道の冬でも安心な寒さ対策も整えた。契約は1期3年間。店主が常に店にいること、支店は出さないこと、メインメニューは変えないこと——3年間で顧客を獲得し資金を貯め、帯広市内で新たに店を構えるまでに成長することがコンセプトだった。今では毎月のように全国各地の商店街関係者や議員が視察に来る、活性化の成功例になった。屋台は「懐かしいもの」じゃない。仕組みさえ整えれば、今でも作れる。帯広がそれを証明した。
屋台再興タスクフォース、結成せよ。帯広モデルを全国に展開するために必要なのは、法律でも予算でもなく、まず「動く人間」だ。各地に、屋台再興タスクフォースを結成する。メンバーは行政担当者、地元の飲食関係者、商店街の有志、そして何より「このままでは終わらせたくない」と思っている市民だ。
タスクフォースの仕事はシンプルだ。
- 地元の遊休地・空き駐車場・空き地をリストアップする
- 保健所・道路管理者と交渉し、許可条件を整理する
- 出店希望者を募り、面接・選考を行う
- 運営ルールを決め、3年契約でスタートする 難しくない。帯広がやったことを、やるだけだ。
成功した街が、次の街へ。ここまでは、やる気さえあれば実現できる話だ。法律を変える必要もない。巨額の予算もいらない。成功した街のタスクフォースが、苦戦している街へ出向いてノウハウを共有すればいい。帯広が福岡に学んだように、次の街が帯広に学ぶ。そうやって灯りは広がっていく。
あるいは、よそのやり方など関係なく、独自の路線で突き進むのもいい。その土地の食材、その土地の気候、その土地の人間関係——屋台はチェーン店ではないのだから、同じである必要は何もない。手前味噌という言葉がある。自分で作った味噌だから、ひいき目に見てしまうという意味で使われる。しかし本来、手前味噌は本物だ。自分の手で、自分の土地で、自分が作った味噌だから価値がある。
屋台も同じだ。よそのコピーではなく、その街にしかない一杯が、その街の誇りになる。1人部屋で宅配グルメを食べる夜も、悪くはない。しかし街のあちこちで、見知らぬ誰かと肩を並べて、湯気の立つ一杯を食べる生活のほうが、少し豊かではないかと思う。

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