モンゴル相撲(ブフ)をご存知だろうか。モンゴル伝統の徒手格闘技で、国技として絶大な人気を誇る。約2500年の歴史を持ち、かつてチンギス・ハンも愛好したとされる。土俵はなく、草原で行われ、相手の膝・肘・背中・頭を先に地面につけた方が勝ちだ。技の数は600種類を超えるとも言われている。
基本の攻め——これを疎かにすると話にならない 試合は日本の相撲のような立ち合いの激突ではなく、柔道のように組み手から始まる。衣装(ベストとパンツ)をつかみ、相手の重心を崩して投げる。主な攻めは三つだ。
まず腰投げ系。試合の多くの勝利は腰投げで決まる。相手を引きつけて腰を入れ、前方に投げる。ブフの基本中の基本であり、これが通らないと試合にならない。
次に足技。柔道の大内刈りや小外掛けに相当する足技が多く見られる。体を密着させた状態から足を引っ掛けて崩す。上体の動きと連動させると力が倍になる。
そして足つかみ投げ。ハルハ・ブフでは足つかみが広く使われる。相手の足や腰をつかんで持ち上げ、地面に叩きつけるフィニッシュが非常に多く見られる。これは馬や羊を地面に倒す技術の応用とも言われている。これらが王道だ。ここを疎かにして勝てるほど、ブフは甘くない。
しかし、王道だけでは読まれる 素早く動いて予期せぬ技を仕掛けて速攻で勝とうとする選手もいれば、決定的な動きをせず相手を消耗させることを狙う選手もいる。上位に残るほど、相手は王道の攻めを読んでいる。そこで裏をかく攻めが必要になる。
ヒュンテルフ——内側からの回転崩し ブフを代表する奇襲技のひとつ。自分の足を相手の両足の間に割り込ませ、そのまま回転してひねる。それだけだ。シンプルだが変化が無数にある。組み合いが膠着したところで突然仕掛けると特に効く。相手が上半身の組み手に集中している隙に足が入る。気づいたときには体幹が崩れている。
タックルの奇襲的使用 通常の組み手の流れを突然破り、低い姿勢で相手の両足に飛び込む。相手が上を意識しているとき、重心が高くなった一瞬を突く。下への対応が遅れたところで足を抱えて一気に投げる。
捨て身技のルールを逆用する 捨て身技では、投げたか投げられたかに関係なく、先に地面に触れた方が負けとなる。相手が巴投げのような捨て身技を仕掛けてきたとき、自分が先に落ちないよう踏ん張りながら相手を地面に押し込む。仕掛けた側が自滅する。
引き崩しのタイミング 長い膠着のあと、突然引く方向を変える。相手の押してくる力を利用して側方に崩す。膠着が長いほど相手の集中力は均衡の維持に向く。その瞬間に方向を変えると体が流れ、そこに投げを合わせる。
基本は必ず守る。そのうえで、守っているからこそ裏が生きる。相手が王道を警戒し始めたとき、初めて奇襲に意味が生まれる。

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